帝王切開後の腰痛について
帝王切開後の腰痛はなぜ起こる?原因と症状をわかりやすく解説
1. 帝王切開後の腰痛で悩むママへ
出産後、「腰がずっと重い」「抱っこや授乳のあとに腰がズキッと痛む」と感じていませんか。 特に帝王切開で出産した方からは、 「お腹を切ったのに、どうして腰がこんなに痛いの?」という声をよく聞きます。
実は、帝王切開はお腹の手術であると同時に、 体全体のバランスや支え方が大きく変わってしまう出来事でもあります。 その結果、腰に負担が集中し、産後しばらくしてから腰痛が強く出てくることも少なくありません。
この記事では、帝王切開後の腰痛について 「なぜ起こるのか」を中心に、 原因と症状を一般の方にも分かりやすく解説していきます。

当院ではベットサイドまでベビーカーのままお子さんと一緒のスペースで施術をうけられます。
『子供が泣いたらどうしよう・・・』と悩むママさんも多くいらっしゃいますが、多くのママさんが
お子さんを連れてご来院されており、もし泣いてしまっても当院スタッフが柔軟に対応いたしますのでご安心ください。
2. 帝王切開は「お腹の手術」=体幹バランスが崩れやすい
帝王切開では、赤ちゃんを安全に出すために 皮膚から子宮まで、何層もの組織を切開していきます。 術後はきれいに縫い合わせてあっても、 しばらくは傷の周りが固くなり、引きつれたり、つっぱる感じが残ります。
特に影響を受けるのが、
- お腹の前側の筋肉(腹直筋)
- 体のコルセット役となる深い筋肉(腹横筋・多裂筋)
- 骨盤や内臓を下から支える骨盤底筋
これらはまとめて「体幹(コア)」と呼ばれ、 本来は腰や骨盤を安定させる重要なパーツです。 しかし、帝王切開のあとしばらくは 「お腹に力を入れると怖い」「傷が痛いから無意識にかばう」 という状態になりやすく、体幹の働きが低下します。
その結果、 本来お腹側が受け持つはずだった負担を、腰の筋肉が一手に引き受けることになり、 腰痛が出やすい土台ができてしまうのです。
3. 腹直筋乖離と腰痛の関係
妊娠中はお腹が大きくなるにつれて、 お腹の前にある腹直筋が左右に引き伸ばされていきます。 真ん中にある白線という線維が伸ばされ、 出産後もしばらく腹直筋が左右に離れたままになることがあります。 これが腹直筋乖離(ふくちょくきんかいり)と呼ばれる状態です。
腹直筋乖離があると、
- お腹に力を入れても、うまく力が伝わらない
- 腹圧が保てず、腰が反りやすくなる
- 姿勢を支える「コアの筒」がゆるんだ状態になる
つまり、体の前側の支えが弱くなり、その分、腰の筋肉に負担が集中します。 位置としてはおへそ周りに力の入りにくさや、ぽっこりお腹が残ることが多く、 それが見た目の悩みだけでなく、腰痛の原因にもつながっています。
腹直筋乖離そのものは、時間とともに軽くなっていくことも多いのですが、 放っておくと「正しい腹筋の使い方を忘れたまま」になり、 腰痛が慢性化するケースも少なくありません。
4. 骨盤が不安定になる理由
妊娠・出産の時期には、リラキシンというホルモンの影響で 骨盤周りの靭帯がゆるみ、赤ちゃんが通りやすいように準備されます。 帝王切開であっても、このホルモンの作用は同じです。
靭帯がゆるむことで、 骨盤の後ろ側にある仙腸関節や 前側の恥骨結合がいつもより動きやすくなります。 これは必要な変化ですが、産後すぐは
- 骨盤がグラグラする感じ
- お尻の奥や腰の付け根あたりの鈍い痛み
- 片脚立ちをすると不安定でつらい
といった症状が出ることがあります。
帝王切開では、さらにお腹の筋肉が使いにくい状態が重なるため、 骨盤を外から支えてくれる筋肉の働きも低下しがちです。 その結果、 「骨盤が不安定」+「支える筋肉が弱い」= 腰に負担が集中 という構図になり、腰の痛みや違和感が続きやすくなります。
5. 授乳・抱っこによる姿勢負荷
帝王切開後は、傷口をかばうために どうしても前かがみや、片側に体重をかけるクセが出やすくなります。 そこに、毎日の授乳や抱っこが加わると、 腰の負担はさらに増えていきます。
特に注意したいのが次のような姿勢です。
- 片側の腰に赤ちゃんを乗せて、いつも同じ側で抱っこしている
- ソファやベッドにもたれた状態で前かがみになって授乳している
- 立ったまま骨盤を前に突き出すような姿勢で抱っこしている
これらの姿勢は、 骨盤のねじれや反り腰を強め、 腰椎の後ろ側の関節や筋肉に大きなストレスをかけます。 一回一回は小さな負担でも、 毎日何十回とくり返すことで、痛みとして現れてきます。
6. 帝王切開後の腰痛で起こりやすい症状
帝王切開後の腰痛には、次のような特徴的な症状がみられます。
- 朝起きると腰がガチガチに固まっている
- 長時間立っていると、腰からお尻にかけて重だるい
- 授乳や抱っこのあとに、腰の一部分がズキッと痛む
- 腰を反らすと痛みが強くなるが、丸めると少し楽になる
- 骨盤ベルトをすると、いくらか安定した感じがする
- くしゃみ・咳でお腹に力が入ると、腰にも響く
こうした症状は、 体幹の筋肉が弱ったまま、骨盤がグラグラしている状態で 日常生活を送っているサインとも言えます。
7. なぜ腰痛が長引きやすいのか?
帝王切開後の腰痛が長引きやすい理由は、 単に「腰の筋肉が疲れているから」ではありません。 次のように、いくつもの要因が重なっているからです。
- 腹筋や骨盤底筋がうまく働かないまま、育児がスタートする
- 睡眠不足やストレスで、筋肉の緊張がとれにくい
- 自分自身のケアに割く時間がほとんどない
- 「産後だから仕方ない」とあきらめてしまいやすい
こうして、「痛みを感じる → かばう → さらに動きが悪くなる」 という悪循環に入ってしまうと、 数か月〜数年単位で腰痛が続いてしまうこともあります。
8. 改善のための考え方とセルフケアの方向性
腰痛の改善には、痛い部分だけをもむのではなく、 原因となっている体幹と骨盤に目を向けることが大切です。
8-1. 体幹(コア)を少しずつ目覚めさせる
いきなり強い腹筋運動をする必要はありません。 まずは、
- 楽な姿勢での腹式呼吸
- お腹をふくらませる・軽くへこませる練習
- 息を吐きながら軽くおへそを背骨の方に引き寄せる意識
こうしたソフトなエクササイズから始めることで、 腹横筋や多裂筋といった深い筋肉が少しずつ働き始めます。
8-2. 骨盤を安定させる
骨盤周りを安定させるためには、 お尻やももの付け根にある筋肉も重要です。 痛みが強くない範囲で、
- 仰向けで膝を曲げ、お尻を軽く持ち上げる(ブリッジ)
- 横向きで脚を少し開くエクササイズ
などを取り入れていくと、骨盤全体が支えられやすくなります。
8-3. 姿勢と動作を見直す
授乳や抱っこは毎日のことだからこそ、 ほんの少しの工夫が大きな差になります。
- 授乳クッションを使って、前かがみになりすぎない
- 抱っこの左右を意識して、できるだけ交互にする
- 長時間立ちっぱなしの家事は、途中で座る・姿勢を変える
こうした「負担を減らす工夫」と 「体幹・骨盤を整えるエクササイズ」を組み合わせていくことで、 少しずつ腰の状態が変わっていきます。
9. まとめ
帝王切開後の腰痛は、 お腹の傷そのものだけが原因ではありません。
- 腹直筋乖離などによる体幹の弱化
- ホルモンの影響と筋力低下による骨盤の不安定さ
- 授乳・抱っこ・家事による姿勢負荷の増加
これらが重なり合うことで、腰に大きな負担がかかり、 痛みとして現れてきます。
しかし、正しく体を理解し、 少しずつ体幹と骨盤を整えていけば、 帝王切開後の腰痛は改善していくケースが多く見られます。
「産後だから仕方ない」とあきらめず、 気になる症状があれば、早めに専門家に相談してみてください。
10. この記事で使用するイメージ画像例

















